生涯最初のヘア・スクランブル 4
スタート地点ではクラスごとに横一列に並ぶよう案内板が出ている。A級は最前列、ついでB,C,D、最後はレディスのA級。B,Cはさらに年齢別や排気量別の細かなクラスに分かれていて、全部で10クラス程がそれぞれが横一列に並んでいる。レディスのB級以下は前日に既にレースを終えている。A級のみオープンクラスと同じ時間帯に走行する。スタート方式はデッドエンジンスタートと言そうで、旗が振り下ろされたらエンジンをかけ、スタートする。
さて、いよいよレース開始時間だ。旗が振り下ろされ、最前列のA級がスタートしていく。数分の間を置き、次に旗が振り下ろされるとB級250CCクラスのスタート。それが最後のレディスAクラスまで繰り返される。B250クラスには、さっきまで案内をしてくれていたA君がエントリーしている。A君や他のライダーが目の前の第3コーナーを凄い勢いで通過していくのを見る。自分の腕でそんな真似できるのだろうかとちょっと不安になる。自分の周りを見回すと、左隣2台は80CCの2ストで、どう見ても小学生が乗っている。右側をみると自分と変わらない年齢のライダー2人が、それぞれ450CCクラスの4ストバイクに乗っている。自分の150CCの4ストが非力に見えてしょうがない。まあ、実際非力ではあるが。一列前のクラスには今年から発売のCRF150Rがいる。どこまでバイクに差があるのか、できればこの150Rと走ってみたかった。後ろのレディスクラスには、オフ経験が長そうな女の子達。小学校高学年か中学生位に見える。後ろから煽られたらどうしようなどと、さらに不安になる。
前の組がスタートし、自分の番が迫ってきた。あまり緊張はなく、どちらかというと開き直っている。旗が振り上げられる。ギアを入れクラッチを握り、キックに足をかける。旗が振り下ろされると同時にキックを踏みおろす。一発でかかりスタートを切る。が、すぐ隣のおじさんが景気良くアクセルを開けすぎ、いきなりめくれ上がって自分の前で転倒。おっと!という感じでかわすが、順位は真ん中よりも後ろに下がった。ついで逆バンクの1コーナーでは他の張り切りすぎたライダーがアウト側に吹き飛んでいく。観客には見所の多い初心者Dクラスのスタートとなった。
ペースはハイスピード林道ツーなみで、無理すればもうちょっとペースを上げられそうだが、先は長いしコケる程攻めないのがモットーだ。前のバイクに淡々とついていく。150ではやはり立ち上がりで差をあけられる。でも気付くと次のコーナーまでには追いついている。マイルドで扱いやすく疲れにくい。勝てるバイクではないが、そこそこの平均速度を維持できるバイクだ。前のオーナーが社外品のいいリアサスを入れておいてくれた。おかげでギャップもしなやかに、コーナーでは滑る気がせず、ジャンプでも飛び出す時に踏み沈めるとよく跳ね返ってくる。着地では底付きせずちゃんと踏ん張る。モトクロス場に持っていっても、下手をするとKXよりいいかもしれないななどと思っている内に、レースは順位を変えないままウッズへと移っていく。
ウッズに入って間もなく、さっきから後ろをつつかれていたYZ80に抜かれてしまった。一方ウッズランの経験がまだ浅いライダーが、ほとんど止まるようなスピードで走っている。それを1台、2台と抜き、恐らくクラスでの順位は真ん中くらいに上がった。そして魔の「エレベータ」がやってくる。順位を落としてでも迂回するつもりでいたが、うっかり直進してしまい迂回しそこなう。覚悟を決めエレベータに飛び込もうとしたものの、下を見るとむちゃくちゃ高い。高所恐怖症の自分にはやはり無理だ。「だめだー!こんなトコ行けねぇー!!」と思わず叫びながらUターンしようとするが、後ろのライダーから「何グズグズしてるんだぁ!!」的な圧力を感じ、諦めて3メートル下の谷底へと飛び込んでいった。フロントだけ壁に這わせることを意識し、バイクが傾いたと思った次の瞬間、ドスンっという音と共にすでに谷底に着地していた。やってみれば思ったより簡単だ。次いで登り。ヒルクライムはどちらかというと好きな方で、コースコンディションも良いため、登るだけなら楽勝。ただし登りきった直後がまた鋭角に下っている事には気付かなかった。フロントが上がっている状態でアクセルを閉じたので、一気にフロントから落ちる。これには死ぬほど驚いた。幸運にも、この下りはあまり深くなく、バランスを崩しながらも無事クリア。ここでは後ろのライダーにはいろいろ迷惑をかけた。
延々と続くシングルトラックを抜け、そろそろ疲れがを感じ始めた頃になって、やっとでスタート地点が見えてきた。2周目に入る。時計を持ってこなかったのでラップタイムがわからないが、腹時計では30分ちょっとかかった感じだ。3周するには一時間以内に2周目を終えなければならない。ということは、後半飛ばして20分台が出れば、ひょっとしたら3周目に入れるかもしれない。いままではどちらかというと、前後のライダーと仲良く林道ツー気分で走っていた。「レースなんだから攻める」と心を入れ換える。疲れは出始めているものの、体も温まってよく動くようになっている。乗れてきた自分は、ジャンプもバンバン飛んじゃったし、ペースも上げられるようになった。スーパーな状態だ。ふと見ると、ずっと先を走っていたはずの前のライダーが、いつの間にか射程距離に入ってきた。
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